介護コラム

毎日新聞のWebサイト「介護福祉.com」で掲載した『毎日介護コラム』全9回

人生を素敵に生きるために~介護問題をどう考えますか?~

第6回 「介護教室は転ばぬ先の杖!」

我が家の姑、ウルトラ元気ばあちゃんの「バアバ」はもうすぐ90歳になります。そのバアバも以前に一度、あわや寝たきりの危機を乗り越えました。家族のリハビリ作戦とバアバの努力もあってなんとか寝たきりにならず元気でいますが、突然「介護」ということになるかもしれないことを考え、私は時間がある時には市でやっている介護教室に勉強に行くようにしています。介護教室ではシーツの換え方や寝間着の着替えさせ方などといった基本的な介護方法やコツなどを教えてくれます。

なんでバアバが元気な今、介護教室に勉強しに行くのかと言うと、それは実際にバアバが寝たきりになってからでは学びに行く時間などないことが前回の時に分かったからなんです。介護問題は突然にやって来ます。その時に基本的な知識を持っていれば自分もあたふたしないし、介護される側も知識のある人にされるのとそうじゃないのでは全然違うと思います。

よく聞く話で、介護をしている主婦が、お年寄りをお風呂に入れたりトイレに連れて行くのに腰を痛めてしまうということがありますが、介護教室では無理にお年寄りを背負ったりして腰を痛めないようなコツなども教えてくれました。それから介護のスペシャリストの話が聴けたり、実際に介護経験で苦労された方の体験談などもあり、そういう話を聞くと事前に心の準備が出来るんだなぁと思いました。

また、市で貸し出ししている介護ビデオを借りてきて、バアバと一緒に見るんです。そして「バアバ、あなたが寝たきりになったら私がこういう風に着替えさせたり、お風呂に入れるんだから、その時はこのビデオでやってるようにバアバもやるのよ」と言うと、まだ介護しているわけじゃないのに「ママ、すまないねぇ」と言い、バアバも真剣にビデオで介護の仕方、され方を見ています。

ある時そのことを知り合いに話したら、「よくおばあちゃんに介護のビデオなんて見せられるわね。おばあちゃんがかわいそうじゃない」と言いました。

私はそういうものの捉え方が、日本における介護問題の遅れにつながっているような気がします。人は誰しも等しく老いて行きます。そして高齢化社会を迎えた現在、その先には介護という避けて通れない問題があるのが実情です。年老いれば身体が言うことを聞かなくなるのは当たり前で、身体が動かなくなったら誰かが面倒を見るのも当たり前という認識を、家族を始め地域社会でもっと育ていかなければいけないのではないでしょうか?

介護問題を難しく考える前に、まず介護の仕方や介護のコツを学べる介護教室にでも出かけてみませんか?目の前に問題が立ちはだかる前にちょっとした時間を有効に使えば、きっと「転ばぬ先の杖」になるのではないでしょうか。