介護コラム

毎日新聞のWebサイト「介護福祉.com」で掲載した『毎日介護コラム』全9回

人生を素敵に生きるために~介護問題をどう考えますか?~

第2回 「親との同居はいやですか?」

嫁姑問題は介護にも大きく関わっていると思うんです。寝たきりになった姑を介護する時に肉体的な負担もさることながら、精神的な負担が大きな問題になると思います。我が家の姑「バアバ」とはもう結婚してからずっと同居なのでかれこれ30年近く一緒に暮らしています。

その間、激しい嫁姑戦争もありましたが、4年前に私が乳ガンを患ったことをきっかけに私自身が大きく変わり、バアバと今ではうまく暮らしています。しかし、多くの人が核家族で親と同居しない生活をしているこの時代に、いきなり姑が倒れたから同居してすべての面倒を見るというのは大変なことだと思います。もともと私は結婚したら同居賛成派ですが、介護問題を考えたらこれからの時代は親との同居がベストだと思っています。人はいつか必ず老いるものです。私がバアバと同居して学んだことはたくさんありますが、バアバが老いていく姿を目の当たりに見てきたことが、いずれ自分にも訪れる「老い」に対しての心構えになっているなあと感じています。

昔は一家の主婦として全ての家事をテキパキこなしてきたバアバが、歳とともに身体が動かなくなり、本人自身が一番イライラしてちょっとしたことで怒ったりするようになって、嫁姑問題もあって家の中は冷戦状態。口も聞かない、顔も合わせないような日々が長い間ありましたが、今思えば喧嘩してでも一緒に暮らしてきたからこそ、老いたバアバに対して優しい気持ちや労りの心が私の中に生まれたんです。

また、子ども達にとってもおばあちゃんと一緒に暮らしてきたことがとても良かったと思っています。高齢化で福祉社会を目指しても、福祉の心が育たなければ意味が無いんです。「老人を大切に」とか「労りの心を」などと言っても、お年寄りと一緒に暮らして、日々の生活で接してこなければどうして良いのか分からないのが現状だと思います。

我が家の子ども達は、バアバとずっと一緒に暮らしてきたので、自然にバアバを労り、気遣っています。それは「年寄りは大事にする」という家庭での習慣が身に付いているせいでしょう。いずれ私たちが老いた時のことを考えても、人生は順番だということを教育するためにも同居は大事なことだと思います。

私のマネージャーは40歳で主婦と仕事を両立させながら、ご主人のお父さんと同居しています。妻に癌で先立たれたお父さんと同居を考えたご主人が彼女に同居の賛否を聞いた時に「寝たきりになってからいきなり一緒に暮らしても介護する自信がないから、元気な今のうちから一緒に暮らして、お互い本当の親子のようになっておきたい」と言ったそうです。私は非常に正しい選択をしたなあと思いました。実の親の介護でも大変なのに、舅姑は血の繋がりのないいわば他人ですからもっと大変です。彼女のようにいずれ同居しなければならないのなら、元気なうちから同居して、お互いの良いところや嫌なところをきちんと分かり合いっておくというのはお互いにとって結果的に幸せになれます。

また、一緒に暮らすことによって老化やボケの初期症状に気がつくことが出来ます。洗面場の水を出しっぱなしにしていたり、コンロにかけた鍋を忘れて焦がしたり。こんなこともボケの初期症状だそうですが、一緒に暮らしているとそういったことからボケの進行をくい止めることも出来るそうです。