介護コラム

毎日新聞のWebサイト「介護福祉.com」で掲載した『毎日介護コラム』全9回

人生を素敵に生きるために~介護問題をどう考えますか?~

第5回 「やりたいことはやらせるべきか?」

介護問題では「ボケ」と「寝たきり」がつきものですが、老人の寝たきりになる理由に、転倒による「骨折」があるそうです。お年寄りが怪我をして動けなくなったり入院したりすると、ボケも急激に進行すると言われており、骨折とボケは切っても切れない間柄のようです。このお年寄りにとっては非常に恐ろしい「骨折」を防ぐために、お年寄り本人がやりたいことも家族によってやらせてあげないということが起こりがちのようです。

その1つにお年寄りから自転車を取り上げてしまうケースがあります。ある時「主人がお父さんに自転車は危ないから乗ったらダメだって言って禁止してから、外にあんまり行かなくなっちゃって困ってるの」と友人に相談されました。私は「どうして自転車はダメなの?」と聞くと、「自転車で転んで骨折でもしたら寝たきりになっちゃうぞって主人がいうのよ。確かにお父さんももう80歳だからね」と友人。私は「うちのバアバはおたくのお父さんよりずっと年寄りだけど自転車乗ってるわよ」っと言うと、「アキさん骨折が心配じゃないの?」とびっくりしていました。

そこで私は「きついこと言うけど、ご主人もあなたもおじいちゃんの骨折が心配って言ってるけれど、実は自分たちが介護することになるのが心配だから自転車を取り上げてしまったってことを分かってる?」と言うと彼女ははっとして「そんな風に考えなかったけれど、実は心のどこかで骨折でもされて、介護することになるのはいやだなって思っていたような気がする。主人にも話してみるわ」と彼女は帰って行きました。

確かに自転車に乗れば転んで骨折する可能性はあると思いますが、私は本人が乗りたいなら乗らせてあげるべきだと考えています。賛否両論はあるとは思いますが。心配ばかりしていてもしょうがないし、自転車に乗れば歩くよりずっ行動範囲が広がり、運動神経も衰えないうえに、何より歩くよりずっと行動範囲が広がることで、生きる楽しみを見つける行動範囲が広がると思います。

うちのバアバは69歳の時に50ccの免許を取って、78歳の時にスキューバダイビングを始めて今だ現役で潜ります。そしてもうすぐ90歳を迎えるバアバの夢は、死ぬまでに是非ともスカイダイビングをしたいそうです。私がバアバに「スカイダイビングでパラシュートが開かなくて事故で死んじゃかもしれないよ」というと、バアバは「どうせいつか死ぬんだから、自分のやりたいことやって死んだ方がいいね」と言いました。

年老いてもいろんなことに興味を持ち、やりたいと思う気持ちを尊重し、実行させてあげることも元気でいられる秘訣だと思います。そのためには家族も心配ばかりするのではなく、もっとポジティブに考えることも大事じゃないかと思いますが、皆さんいかがですか?